MDFに穴をあけてみる(自在錐)

  MDF(繊維板)は柔らかく、加工に向いているのでいろいろな製品にもよく利用されているが、実際にそれを自分で使おうと思うと、大体はのこぎりでまっすぐ切って接着する程度の加工がほとんどだ。

  ハンドドリルを使って、軽い力でも簡単に穴を開けられる魅力がある反面、一般的な家にある道具でMDFに使えそうなものはのこぎり、錐、ドリルやヤスリくらいのもの。僕自身、それ以上は加工をしてみようとも思わなかった。

  最近、自在錐というものを手に入れたので、MDFを材料にどの程度の加工ができるのか試してみた。

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  MDFは木材をほぐした物を接着剤や圧力を使って固め直したもの。大きさや密度などを自由にできるため品質は安定している反面、繊維を細かく裁断しているため、強度的には本来の木材には程遠く水分を吸いやすく脆い。わかりやすいところで言えば重いものを載せたりすると簡単に変形する、ネジや釘がほとんど使えない(というか効かない、割れやすい)という感じ。

  こんな感じなのでMDFの接合には接着剤を使うことになるのだが、この接着剤を使った方法にも欠点がある。木材の場合は接着剤が剥がれさえしなければ最終的には木材本体が割れる感じになるのだが、MDFの場合は接着面を中心に表面的に剥がれるような感じになる。

  扱いはちょっと悩ましいところがあるが、実際に加工してみると表面が綺麗なので塗装無しでそのまま使えたり、ヤスリで簡単に削れたりとメリットもたくさんあることも確か。こんなMDFだが最近は100均でも入手可能。ちょっとした工作にはもってこいの材料だ。

  ということで、今回はMDFに対して大穴をあけてみることにした。でも、ただ穴をあけるだけだと面白く無いので、普通に考えたらちょっと難しそうな形状に挑戦してみることに。

穴をあける方法

錐(キリ)

  まず、穴を開ける道具として一番最初に思いつくのが錐。穴といっても数ミリの穴が限界なので、ネジを使う時やドリルを使う時の下穴に使うことが多い。この道具だけで穴を貫通させることも出来なくはないが、その穴を何に使おうといった感じになる。  

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ハンドドリル

  次にメジャーなのはハンドドリル。ハンドルを回すとドリルの刃が回るという簡単な仕組みだが、ドリルチャックに取り付けられる大きさの刃と根性があればある程度の穴は開けられる。

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  次に、あまり木材では使わないがテーパーリーマがある。これは、直接穴をあける道具ではなく、一度開けた小さな穴を大きくするのに使う道具だ。円錐状になっているため、根本の太さまでであれば自由な大きさの穴を開けることができる。ただし、テーパーが付いているため、穴自体も円錐状の穴になってしまう。板厚が厚い場合は注意が必要。

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ここからは手動では厳しそうな道具になるので、電動ドリルもしくはボール盤などがある人向けの道具。

  ステップドリルは、ドリルの刃が段階的に付いているような構造のもの。これも木材やアルミのある材料には向かない。ただ、薄板に穴をあけるだけなら何本もドリルの刃を買わなくて済むので便利ではある。

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  ホールソーは、一発で大きな穴をあけるための道具。形状としてはカップ上になった形状の円周がのこぎりになっているという感じのもの。中心軸もドリルになっているので、穴の中心はそのドリルの刃が基準になる。製品としてはドリルを太くしただけのような形状のもの(正確に言えばこれはドリルの刃だが)、ベースプレートに対し、刃の部分のみを望みの半径に合わせて取り付けるタイプのものと、下の写真のように軸のみが別体で、カップ状の刃が半径のバリエーション分だけ付いているものがある。ホールソーの欠点としては、カップ上面が面になっているため、いくら頑張っても刃の高さ分の厚みしか穴があけられないところ。両面から攻めれば最大で刃の高さの2倍まではイケる。

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  最後が本命の自在錐。僕個人はここにたどり着くまでにかなり時間がかかった。というか、そこまで大きな穴はドリルであけた穴を糸鋸でつなぐものだと思い込んでいたから。

原理は簡単で、ホールソーと同じような原理なのだが、円周部はコンパスのような刃でケガキ切るような方式。刃の部分を左右に移動できるので、穴の大きさを自由に開けられるということになる。他の道具と比べて穴をあけられる大きさの割にはコンパクトなのでいいのだが、棒が大きく回転することになるので気をつけないととんでもない怪我をすることになるので要注意。

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で、この自在錐の使い方と言うか癖になるのだが、上のホールソーは円状ののこぎりなので刃厚とアサリの厚さ分だけ削れることになるが、自在錐の場合は削るというよりはケガく感じなので、2ヶ所ある刃はそれぞれ異なる役割を持っている。円周の外周を決める刃と内周を決める刃だ。刃そのものはその内周と外周の間を通ることになるので、刃の軸の厚み(5mm程度)は削りかすになることになる。左右の刃を中心から同じ距離に調節して使うものではないので注意。

今回はこの自在錐をホーザンのボール盤に取り付けて使おうと思っていたのだが、残念ながらドリルチャックの径が小さすぎて取り付けることが出来なかった。(スターエムの標準品は主軸が10mm近くある)

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ということで、今回はブラック・アンド・デッカーのマルチツールのドリルドライバに取り付けた。このドリルチャックならギリギリ装着可能。

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実際の作業

今回使った材料はこれ。ダイソー製MDF6枚組。寸法は10x10x6。この板でテストしてみる。

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  穴をあけるだけだと面白く無いので、ちょっと無理やりな穴にしてみた。イメージとしては下の図のような感じ。灰色部分が刃で削られるアサリになるところ。穴があいた板と輪っか2つを同時に作ってみるという無謀な挑戦。

Hole.jpg

  この作業を行う上での注意点だが、自在錐は中心があってはじめて周りを切り取ることができる。ということは、この円周それぞれを好きなタイミングで切り出していいというわけではなく、必ず外側から切り出していく必要がある。内周を先に切り出してしまうと大穴があいた板のみが残ってしまい、その板の内側を更に切り出すことは出来ないことになるからだ。

で、作業中の写真を撮ればよかったのだが忘れてしまったので出来た部分の写真と文字で注意点を。

  まずは最外部。ぱっと見は綺麗にできた気がする。今回は板のサイズギリギリで切り出してみたのだが、この場合の問題点は、材料を抑える方法がないということ。万力などで抑えてもいいのだが、すぐそばを自在錐が高速回転するので見ていてちょっと怖かった。かといって、手で抑えたりするとドリルのトルクがモロにかかるので手まで怪我しかねない。何かの道具でしっかり固定すること。

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  写真をよく見たら気づくと思うが、自分の中では板材の中心に穴を開けたつもりなのだが、微妙に位置がズレている。原因は穴をあける時の方法。それぞれの穴に対して別作業で穴をあけたわけではなく、同じ形状の板材4枚を重ねて貼りあわせて穴をあけたから。1枚1枚あけてもいいのだが、中心部はドリルが貫通し板材の下まで穴があくというのと、重ねてあければ貫通時の割れ防止になると思ったからだ。でも、ここでボール盤が使えないことが効いた。電動ドリルだと一発目で中心は狙えても板に対しての垂直精度が悪くなる。表面の1枚目にはうまく穴があいたように見えても、2枚目以降深さが増すに従って傾きから中心軸がずれていった結果だと考えられる。まぁ、穴をあけるという志半ばで怪我して終了ということにならなくてよかった。

  次に内周側の2回目の加工。まずはじめの問題点としては持つところ、クランプする部分がなくなるということ。半径が極端に小さい場合は周囲に持つ部分が残るが、今回は2cm程度で切ることにしたので明らかに持つところがない。しようがないので今回は裏面に両面テープを貼り付け、捨て板に貼り付けることで固定することにした。多分こういう場合の一般的な方法だと思う。

  両面テープで貼った状態でも加工はスムーズにできた。中心軸のドリル穴が1回目の加工でかなり大きくなっているので、2回目はあまり綺麗にセンターが出ないがこれはしようがないところ。2回目の切り抜きは4枚バラバラでやってみたのが以下の写真。

IMG_20160211_171544.jpg

  うーん。割れた。これは自在錐で割れたわけではなく、両面テープで貼り付けた捨て板から剥がすときにMDFの積層面が負けた感じ。こういう時がMDFだなと思ってしまう瞬間でもある。両面テープも貼り方や種類を選べばうまくいくかも。もっと言えば切り出される外周部は貼り付けられていなくても、中心部が固定されてさえいれば切り出しは可能なので、設置面積が大きい方、もしくは不要なパーツ側で強力に固定してしまうというのもありだろう。

最後に更にもう1周カットしてみたあとの全パーツがこちら。刃が通ったあと以外は全て切り出せている。

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中心のドリル部の黒ずみは1回目にドリルのチャック部が当たって油が染み込んだ、もしくは焦げたっぽい。

  やってみたコツとしては、無駄に回転数を上げずに、穴の精度に集中すること。怪我をしないように慎重には慎重を期すこと。ドリルと異なり、回転体が丸くないので、紐や角に当たると巻き込んだり跳ね飛んだりする。あと、捨て板にも十分な余裕を持つこと。

  外周を保持しただけの場合は、貫通時に内周部が回転を始めるので貫通したことを認識できるのだが、全面を両面テープで留めた場合は貫通しても見た目上の変化はないし、ドリルのように抜けた感じがない(貫通直後から裏の捨て板の方に刃が当たるため)

まとめ

  MDF程度なら大穴をあける簡単な方法があることを知った。思いつく用途があまりないが(失礼)、スピーカーのキャビネットを作るのにはおすすめの方法。スイッチ程度の穴ならドリルで足りるが、丸棒やアルミ棒を圧入するなどの用途には持ってこいだ。手間はドリルと工数が変わらないので、今までは糸鋸は面倒と避けていたようなデザインも簡単に出来る気がする。木材の節の周りなどでも同じように綺麗な加工ができるのかどうかは分からないが、アクリルの切り出しがうまくできれば重宝しそう。

  一番残念なのは、中心に穴があいてしまうので円盤の切り出しには使えないところ。うまく改造することで穴を開けずに切り出す方法を編み出している方もいるので時間があるときに試してみたいと思う。

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